げんぱつ 第103号 97年10月25日

チェルノブイリ事故から十一年

人口妊娠中絶、毎年約四百件

ベラルーシ

 一九八六年のチェルノブイリ原発事故による「死の灰」の約七割が落ちたとされるペラルーシで、先天異常を出産前に見つける染色体検査等の結果、医師の勧めで毎年約四百件の人工妊娠中絶が行われていることが、同国非常事態省の調べでわかりました。

 同政府は事故から五年後の九一年に「国家先天異常防止計画」をスターとさせました。このなかで、胎児の遺伝子と染色体を調べたり、超音波で検査したりして異常の有無を妊婦に知らせ、異常が重篤な場合は医師が人工妊娠中絶を勧告してきました。

 倫理問題もからみますがペラルーシ政府は妊娠の不安解消を重視して、同計画をすすめています。

 その結果、医師の勧めによる人工妊娠中絶は九一年が二百六十一件で、九二年は三百六十七件に増加。その後、九三年が四百件、九四年は五百二十三件、九五年は四百三十五件となりました。主な異常は小頭症、水頭症、中枢神経の疾患などで、同計画に加わってきたベラルーシ遺伝疾患研究所のゲンナジー・ラジュク所長は「少なくとも当面は医師の勧告によるものだけで年間四百件前後の人工妊娠中絶がつづくだろう一と予想しています。

 非常事態省によると、先天異常児の数は事故前の八五年は千人当たり十二・五人でしたが、事故後は八八年が同十三・九人、八九年が同十四・八人、九〇年が同十六・八人と増加。九一年以降は、医師の勧告による人工妊娠中絶が行われたケースも入れると、九一年が千人当たり十八・二人、九三年が同二十・四人、九五年が同二士二・二人となり、顕著な増加傾向を示しています。

 長瀧重信・放射線影響研究所理事長はこの状況について、「事実なら、非常に憂慮すべきことだと思う。さらに詳しい疫学調査が必要だ」とのべています。

高速増殖炉懇談会

研究・開発推進へ 国民の批判を無視

 原子力委員会の下にある高速増殖炉懇談会(座長・西沢潤一東北大名誉教授)は十月九日、高速増殖炉開発の今後のあり方に関する報告書案をまとめました。

 同報告は「高速増殖炉の実用化の可能性を技術的、社会的に追求するために、その研究開発を進めることが妥当」だとして、従来路線の踏襲をうちだしています。ナトリウム漏れ・火災事故(95.12.8)以来、止まったままの「もんじゅ」についても、研究開発をつづけるとしています。

 しかも、「問題があるというだけで研究開発を中断すること自体、これまでの成果を無にすることに等しく、大きな損害を与える」などと、国民の批判に耳をかす構えはありません。

 「もんじゅ」事故は、プルトニウム循環路線そのものの破綻を示しています。

 アメリカ、イギリス、ドイツが技術的・経済的困難から高速増殖炉開発を断念し、フランスも最近計画を撤回しました。

 報告書案は十月十四日の原子カ委員会に提出され、今後一か月間、一般からの意見を公募します。

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