住民投票で巻原発を阻止した住民運動
原発問題住民運動全国連絡センター代表委員
原発問題全国連絡センター代表委員代表
藤巻泰男氏の講演(要旨)
エネルギーの効率化で原発を眠らせよう
一、新潟県巻町における原発住民投票の経過
新潟県の巻町といいますと、日本中そうでありますが原子力発電所を造ろうという地域はどこの地区でも革新勢力の一番弱い所ですね。これがまずねらわれます。巻町も圧倒的に保守の強い町だったんですね。人口三万、社民党、かつての社会党、共産党もありますが町長選で独自の候補をたてますとだいたい二千票しかとれなかったところです。しかし、最近は新潟市のすぐとなりで、新潟市内の土地の値段がどんどん上がりますから住宅を建てる方が随分増えました。新潟大学の先生方も巻町に移ってこられ、暮らしているという方も増えてきています。この点が今回の勝利につながったひとつの契機だろうなと思いますが、巻町では原発問題が出ましてから二十六年になります。
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新潟県で東京電力と東北電力と二つの電力会社をみていますが、東京電力に比べますと東北電力はやり方が下手ですね。けちるんですね、用地買収で。東京電力だとこの土地は坪一万円ぐらいですと、三万ぐらい出しますからどうぞ譲って下さいと言っだそうですね。東北電力は坪一万円ぐらいですと一万一千ぐらいでどうですかというもんですから、まとまらない。巻原発は第一次公開ヒヤリングは終わって通産省に設置許可を申請したけれど、その時点で全体の面積が二〇四平方メートルで、その中で町の土地が二四〇〇、個人の土地が一三〇〇平方メートル買収できなかった。それで安全審査の中断を通産省に申し入れまして中断をしていたのです。原子炉の設置許可を申請して安全審査が中断しているというのは日本で初めてです。
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二、住民投票運動を成功させた原動力
ところがこの九三年から九四年にかけまして動きが出てきました。選挙制度が変わり小選挙区制になる。その選挙区から一人しか当選できなくなる。自民党も候補を二人立てるわけにはいかない。自民党の候補者が一人にしぼられるということは町長選でも保守が一本になるということです。ここは保守の二派が相争っていましたから町長になるにはいくら少なくても革新の票をとっておいた方が町長になるんです。ですから「原発は慎重、いや、原発は凍結します」というと町長に当選するんです。一期やるとその次に自信が出てきて今度は「原発推進します」というと落ちる。それを繰り返す。一期ずつ交代してきたのです。
ところが、当時の佐藤町長が保守が一本化したもんですからもう絶対大丈夫だ。過去二回の町長選で原発凍結だと言ってきたが、今回になりますともう原発凍結はやめた、俺は「世界一の原発をこの町につくろう」こう公言してはぱからなかった。一方、社民系のみなさんは原発推進を唱えていた現職の町会議員の一人にまあ原発推進というのはやめて慎重ということでどうだろうか、選挙公約には原発慎重ということで政策協定をやってその人を推薦した。世界一の原発を作ろうという町長と、原発に慎重ということではどうしても納得できないという層もまたかなりあった。
そこで、私どもはこれはやっぱり若い人たちが支持する候補者をたてるべきだ。こういって新潟のベッドタウンになってますから若いお母さん方が大勢います。その中で無認可保育所を認可保育所にする、自分のとこだけでなく他のところも全部認可をさせていった運動の先頭にたっていた相坂さんという人を町長に立てよう、これは保育園の園長さんでしたから、そこに子供をあずけているお母さんたちが選挙の中心になりました。初めてマイクを持って街頭宣伝に出ていく。震えながらやったわけですね。旦那さんは事務所の方に行って炊き出しの手伝いをする、という選挙風景でした。あんな連中が選挙やって票がとれるのかということだったわけですけども、ここに書いてありますように九千、六千、四千という結果になりました。わずか三週間ぐらいしか準備の期間もなかったわけですけれども、これだけの票をとれたという自信はかなりのものだったわけです。
九四年八月 町長選
推進(保守系) 佐藤莞爾 九,〇〇六
慎重(社民党推薦) 村松治夫 六,二四五
反対(共産党推薦) 相坂 功 四,三八二
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そのお母さん方の活躍を見ていた町の酒屋さんとかいろんな中間層のみなさんが考えたんですね。保守が一本化して世界一の原発を作ると言った佐藤町長は九千だった。あとの二人の候補者の票を加えるとそれを上回る。俺は絶対に原発に賛成できないというので、それらのグループのみなさんが「住民投票を実行する会」というのを作ったんですね。私どもは最初はいったい何を目的にしてるんだ、「巻原発住民投票を実行する会」というのは賛成なのか、反対なのか、私どもの感覚では常にそれを求めがちです。ところが「私らは原発に賛成でもないし、反対でもない。しかし、原発問題というのは巻町の将来にとって極めて重要だということは考えている。重要な事であれば町民の意見をとることによって決めるのが正しいのではないか。議会にだけ任しておいたのでは必ずしも正確な意志の反映はできないだろう、そこで『住民投票を実行する会』を作ったんだ」こういう説明でした。
私どもも話をする中で、とにかく自分たちの住んでいる町だから自分たちの意見を聞いてくれるそういう政治を求めると言うなら本当にやりましょうということになりました。ですけども「実行する会」というのは原発反対というのは言わないんです。「投票をして下さい」と言うだけだったんです。その運動が中間層も合めてあの大きな勝利になっていったという事であります。
この運動を成功させた力というのは町長選でお母さん方が手作りの選挙を初めてやってみた、やればできるんだという自信、そして世界一の原発をつくるといった町長の票を上回った二つの候補者を一つにしてなんとかできないかというこの住民投票、こういう運動をやりながら住民の一人ひとりがきたえられていきました。最初からこうなるだろうと考えていた人は一人もいないと思いますね、運動のなかから発展があったということであります。
で、住民投票をやれといいますと、当然町長はやらないと言いますね。町長がやらないと言うなら俺たちの手でやろうと自主的な、自主管理の住民投票をやろう、これも半数近い町民が参加した。
九五年二月五日 自主管理投票
投票数 一〇、三七八(有権者の四五%)
うち反対 九、八五四(九五%)
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ところが、町長は町の公民館を投票所に貸してくれないばかりか、「そんな勝手にやったものは認められません、住民投票の結果は決して認めません」こういうわけですね。それで「俺たちのやった町民の半数が参加したその投票を認めないというなら、そんな町長はいらないよ」と運動をやって町民に訴えた一人ひとりからそういう意見がでてきました。
町長選ならいいですが、現職の町長を辞めさせるリコールというのはどうかと思いまして、私どもは現地の町民の声なんかも聞きましたし、また一部の人達には「そりゃ危ないよ、負ける戦争はやらないほうがいい」、そういう意見が強かった。それで私達も十分譲諭いたしました。いたしましたが、第一線にいるお母さん方が「私達がこれだけ一生懸命に運動している声を聞かないような町長だったらやっばりやめさせるべきだ」という声になりました。「よしそれじゃあ、リコールをやろう」。それで、「住民投票を実行する会」はもちろんですが、原発に批判的な六つの団体がですね、全部一つになって一万の署名を集めなければならない。一万の署名を集めるには、ちゃんと名前を書いてもらうわけですから、一人でそう大勢集めるわけにいかないとするならば、必死になって千人の受任者を集めました。
そして、それぞれのグルーブが組を作ってかたっばしからつぶしていくんですね。今日はここの町内、今日はここの町内と、六つの団体に「実行する会」を含めますと、もうそこで制圧しちゃうんですね。私どもは街頭宣伝をやっていましたが、最後には「もう私達、ここの人達と全部話し合ってハンコ、名前を書いてもらうから、もうマイクいりませんよ」というくらいになって、町長のリコールが成功したんですね。
その町長のリコール運動の中で、現職の佐藤町長、まあ世界一の原発をつくるというほぎの男ですから、ふんぞり返って、俺のいうことが一番正しいみたいな顔してテレビに出てたわけですから、あんまり応援がなかった。それも面白くないということで辞職しちゃったんです(九五年十二月)。
そして、町長のリコールを成功させて、今の町長笹口さんが「実行する会」の代表だったんですが、「住民投票して住民の声を聞く」と書った団体の責任者だったから、当然町長になるべきだったということで私どもの推薦で、町長選に立候補したしたわけですが、その勢いに押されて原発推進派はとうとう候補者を探すことができなかったわけです。ただ、「無投票はけしからん」ということで、昔県庁にお勤めになった人が一人立候補しましたので、町長選はやりましたが、圧倒的な多数で今の笹日町長が当選をしたわけです。
こういう自主的な、自主管理の住民投票からすすんで町長のリコール署名というたたかいの中から生まれた町長ですから、「住民投票の結果は必ず尊重します。原発予定地内の町有地は売りません」これが当選の第一声だったわけですね。
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原発住民投票運動にあたって私どもは、まず町民のみなさんの大部分を結集しなければいけないというので、今まで私どもはとかく少数派ずれしてますからね、なんか文句を言えばいい、批判してればいい、という立場でしたけれども。圧倒的多数を結集しなかったら、この選挙、住民投票のたたかいは勝利できない、巻原発を止めさせることはできないんだ、多少の意見の違いがあったってお互いの独自性を考慮しながら究極の目標について一致するものについては全部一緒にやろうと。
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ですから、ほとんど連日、新聞折り込みチラシが入りましたけれども、向こうの方は何か偉そうなことをいってるんですけれども、私どもの方のチラシはアンケート中心でした。
「原発をどう乾考えですか?」そんなアンケートを出しまして、返ってくる答にたいして、こういう声もありました、私どもの運動のまずさも指摘されました、ということでその次のチラシでまた返していく、そして、私どもの考えはこうですがいかがでしょうか、と、とにかく私どもの住み続ける町ですから、私どもが答を出して私どもの考えでいきましょう、という基本がそこに置かれていました。こうだからみなさん協力して下さいということは一言も触れない、町民の声を引き出しながらその意見を私どもはこう考えますよ、という形で返しているチラシで一貫しました。
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これにたいして、通産省は日本で初めて前面に出てきました。連続六回の講演会、国が出てきて講演会をやるというと名前の売れた講師を運れてきますし、かなりの権威があると思われるんです、だいたい千人ぐらい集めるというんですね。これに対抗するには、私どもの力だけではやっぱりそこはちょっと迫力がないなあということで、新潟大学の先生方にお願いして新潟大学連絡会で、やっぱり大学の先生方がやるんだということになると違います。お医者さん方も、歯科医師の会だとか看護婦ネットワークだとかいうようなみなさんも新潟大学連絡会がやるなら私どもも仲間になりますということで参加してくれました。向こうが六回やればこっちも六回、反撃して真実はこうですというのをやりました。
その他に、向こうは秘密集会なんですよ。六回の講演会はされてますけれど、後はみな秘密集会です。呼んだ人以外は絶対に入れないという通産省のやり方ですけども、私どもはその地域、町内ごとにみなさんから集まってもらうということでやりました。そして、宣伝カもどんどん出します。最初は私も朝から晩まで一人でしゃべりますと喉が痛んだんですけど、最後になったらやっばり地元のお母さん方が出て来ちゃった。ちょっとしゃべらせてくれと言うので喋ってもらいますと、翌日から一人前の弁士になるんですね。そして彼女らがマイクを持ち車を止めますとね、「となりの母ちゃん出てきて聞いて」、これはいいんですよね。どんなに難しいことを言うよりもその一言が連帯感を強めている。
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さらに、誰でも出来るということで幸せの木、使い古したハンカチをカンパしてもらう、それをひもに付けてその真ん中に一本棒を立てて、これを幸せの木運動としてお母さん方は最初はハンカチを集めるのに必死だったんですけれど、最後になりますと、全県、全国のみなさんからハンカチを送ってくれる。いや、作るのに大変ですわということになったんですね。でも、自分の家の前とか、店の前とかその辺に空き地がありますと、立派なものを作る、巻町のどこに行っても幸せの木がある。
いっぽう、家の前とか三叉路、十字路には必ず、「原発からここまで何キロメートルです」という立看板があるんですね。これは誰でもやれることなんです。ペンキで字を書く得意な人は書いて出す。原発に反対する芸術祭というのもやりました。ありとあらゆることをやって住民の大部分が運動に参加できる、そこに本当の勝利の力が出てくるのではなかろうかと思っているところであります。
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当 然、東北電力なんかは反撃してきましたけれども、それはみなさんのところがまだひどいようですね。南島町、紀勢町の方が私どものところよりはひどいですが、私どもは格安ツアーをやりますと翌日それをチラシでいれます。柏崎原発に毎日東北電力の車で連れて行くんですが、これは、法律に違反するんじゃないかね、白ナンバーなんて言うと問題になるんでしょ?東北電力が自分の会社の車で不特定多数の人を送り迎えするのはおかしいじゃないかというとそれも国会でとりあげられる。
彼らが寿司屋で説明会をやった。だいたい寿司屋か飲み屋でやるんです。東北電力の原発の説明会というのは帰ってくるときに町民がちゃんと見てるんですね。「お前さんは今日は何だったんだい?」と聞くと「いや、原発の説明会」。「赤い顔して酒臭いよ」と言うと「東北電力が出してくれたんだろう。俺は会費ださん」それがまた翌朝のチラシになるわけです。格好の材料ですから「あそこの寿司屋、人が集まってるから俺が行って聞きに行って釆る」とか「俺が行って調べてくる」とか言う町民が多いわけですね、そういうことで多数派を形成していきますので、東北電力や彼らがどんな卑劣なことをやっても、太刀打ちできなかった。
しかし、東北電力も全部の社員を集めて全候補者を二回やってますからね。その他に目立、東芝は自分の関連会社、あるいは社員で出身の者は全部巻町に返しました。そして、賛同署名を集めさせましたが、集まった署名は三万、町の全人口が三万ですから三万の人が賛同すれば、もう原発はもうできあがるわけですけれども、なかなかそうは行かなかったわけです。
九六年八月 原発反対住民投票実施
投票総数 二〇,五〇三 (八八・二九%)
反対 一二,四七八 (六〇・八五%)
賛成 七,九〇四 (三八・五五%)
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住民投票終わって一年を過ぎましたけれども、こんどは原発抜きで俺たちの力で町づくりをやるんだという運動が今もりあがっています。「住民投票を実行する会」というのは、もともと巻町の中小企業のみなさん、中堅どころが中心になって集まった団体です。ですから、伊豆まで行って勉強してきて地ビールをはじめたとか、そういう人達が町づくりをやる。また、お母さん方は自分たちで直接関係のある問題について、保育園は全部公立にしてもらいましたけれども、学童保育をやろうじゃないか、という運動をやりますと、町もそれに対応して取り組みますというから、今までダメだというのをやってくれというのとは違いますね。自分たちがこうやったらどうですかというと、町がそれを受けてくれる。こういう体制になってますから、どんどんいろんな意見が出てきて、意見を集約して行政がそれを実行しようという。
町長も、「巻町というちっちゃな町の住民が日本の原子力政策をうんぬんするというのは間違っているといわれるけれども巻町の町民ほど原発問題を熱心に研究し、長い時間をかけて自分の身につけて判断をする力をつけてきた町民はいない、だから、巻町の町民が出した判断は正しいと思います」と、こういって通産省にも老原発をやめるように申し入れましたが、会わなかったんですね。一つの町の町長が言っているのに具合が悪けりゃ会わん、会えないという通産省がむしろおかしいんじゃないか。今、巻町には自分たちの町を、自分たちの力で作ろう、原発なしで俺たちが作ろうというのがそれぞれのグルーブごとに大きな運動としてもりあがっています。
東北電力は絶対に巻原発はあきらめないと言ってますけれども、原発抜きで町長や町民が町づくりに取り組んでいる中で、東北電力には入るスキがない、巻原発の建設というのは実質的にはできないだろう、こう思います。
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これは巻町の人達が優秀で立派な運動をしたからだけではくないと思います。いま日本をとりまく原子力行政というものに対する国民の批判の背景があったからこそで、このことも忘れてはならないだろうと思います。まず、原発と言いますと死の灰で被爆をするんじゃないかという原子力発電の危険の問題があります。もう一つは、原発財源をもってその地域が振興するんだ、過疎でどうしようもないから原発をもってきてその財源でその町を興そうじゃないかとというのがありますね。それが本当にできるのかというこれが二つめの問題。三つ目は、原発がなければ電気を使うなよ、電気がなければ、足りない電気をどうするんだよ、こういうのがありますね。日本のエネルギー政策はどうなってるのか、この三つの問題がハッキリすれば決まってきます。
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この原発の危険という問題について、ここではごく基本的な事だけ申し上げておきたい。原子力発電というのは放射性物質、核を使うんですから普通の工場とは違う。放射性物質というのはチェリノブイリ原発事故が今ようやく被害の実態をあらわしてきて、これからだんだんはっきりするでしょう。甲状腺障害とかガンが増えていく傾向にあり、セシウム一三〇なら半減するまで三〇年かかるんです、普通の産業とは違う。絶対に事故をおこしてはならないはずのものが安全安全といって安全が確認されないまま推進をされている。その結果が「もんじゅ」、動燃東海聾処理工場の事故です。
日本の最新型炉BWR、一三五万キロワット、芦浜でもつくるということになっていますが、私の柏崎ではもう二基できました。第二次公開ヒアリングでは初めて専門家の先生方も参加して具体的な危険な点を指摘しました。インターナルポンプを圧力容器に内蔵するんですね。五つの防護壁があるから放射能がぜったい外へ漏れないといってますが、圧力容器といっても底に穴を空けてるわけですから、浜岡原発王号機では、ほんのちっちゃな放射能漏れるんでしたね。それを振動のあるポンプを十合も圧力容器の下につけているわけですから、謹が考えたって安心なんかできない。
私のところの柏崎刈羽原発六号機が去年、七号機が今年になって営業いたしました。ところが六号機が営業運転を姶めたのが去年の十一月ですが、試運転に入った八月にもう事故起こしちゃってるんですね。インターナルポンプの事故、燃料、破損の事故、今まで柏崎では七基動いていますけれどもね、今まで一基二基の頃でも一年にトラブルが一件か二件だったんですが、七号機が運鞍を姶めてからべらぼうに忙しくなりました。去年の八月二四日、六号基が放射能漏れ事故を起こした。今年になりましてから五月二一日七号機、七月一九目七号機、七月一八日七号機、これほど六号機、七号機の事故はひん発しています。これは経費をけずり、建設期間も短縮して、という結果ですね。いままた、日立が焼鈍データをねつ造したことが明らかになり、たまりかねた柏崎の市議会はもう原発の推進、反対を間わず、全員協議会を開いて、通産省、日立、日立エンジリニアリング、検査協議会、これらを呼んで8時間、午後一時から夜の八時まで追及した、そういう状況になってきた。ですから、原発の危険、原発が、日本の原発が今日本の原発が安全だといっておられる方はこれは少数派であります。これははっきりしてる。
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原発財源は地域に寄与するかということですが、女川原発、町の人口が三分の一に減っちゃった。原発財源が本当に何百億も入っても、町の役に立たないという見本は、日本で一番大きな原発基地があります柏崎ですね。七基つくると二兆円も投資されると。その二割が地元に落ちるんだ、こういう宣伝だったんですね。いちばん原発誘致に熱心だったのは建設業界でしたけれども、建設業界の方は少なくても一千億の仕事は増える、だから原発をもってくるんだ、と言ったわけですね。ところが実際やってみますと、環境整備で道路をつけたりとか側溝を作るとかいうこと以外はみんな中央の大手なんですね。建設工事の盛んなときにだいたい年間二〇億程度。私も県庁に行って受注額を調べたんですか、二年間で二五億くらいです。請負工事としてはおそらく一千億という読みがあったわけですが、その二割となりますといくらになりますか?それだけの金が地方の業界に落ちていれば商店街は閉店しなくてもいいんですね。いま、商店街はカラスが泣いて、人通りがない。そして、建設が全部終わり、あれだけ増えた飲み屋がお客さんがなくてもう閉口してるという状態です。
そして電源三法による交付金、これが二三〇億は入りましたけれども、原発がきたおかげで入ってきたというんですから、目立ったものはかり作るんですね。体育館一つ三〇億、他になんか作ると二〇億とこうなるわけでしょ?三二〇億ぐらいもってきたって三〇億、五〇億の物を作ればいくつもできない。道路を少し伸ばして終わり、今はもう使い果たしました。後に残されているのは建物の維持費、年間一〇億ぐらいかかるそうです。
それから固定資産税、柏崎も全部で一千億くらい入ります。七号機が運転を始めてから一五年間をみますと一千億以上人りますが、九四年までに六二四億入った。市町村の財政状況と比較対照して不足なものは地方交付税として面倒見ることになってますからね。それよりも上回ったものが原発の固定資産税で儲けになるわけですが、二割になりませんね。で、柏崎はもう二、三年で地方交付税の交付団体に転落します。世界一の原発基地といえども市民の暮らしというのは、他の隣の市とは全然変わらない、むしろ悪いくらい。だいたい、日本中どこ探しても原発作った町で栄えた町ってない、あれば紹介して欲しい。いくら探してもないんですよ。これだけははっきりしてます。
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【エネルギーの効率化で原発を眠らせよう】
さて、エネルギー間題です。よく電力会社のみなさんは、原発に反対する連中は電気を使うなと言います。じゃあ、ほんとに電気足りないのか。去年最高消費電力は八月二日の午後三時、一億六六一二五万キロワットです。これは一年間で一番電気を使うんですね。だいたい、日本の発電能力、発電設備は二億二千万キロワットくらいありますが、それとは別に私どもの考えの基本とは、去年一億六六三五万キロワットを八月二目に使ったが、そのために電気を作る必要があるのか。最高の時と比べますと平均の時には五五%ですから、九〇〇〇万キロワットぐらいですね。四五%の発電設傭を一年間遊は世ておくという事です。ですから日本の電気料金世界一高い。日本の電気料金を一〇〇としますとね、アメリカが六八、イギリスが七一ということになりますね。
ところが企業向けと家庭向けとは料金が違いますから、家庭の電気料金で比ぺますとアメリカの二・二倍、イギリスの一・五倍、フランスの一・四倍、これだけ高くなっています。
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原発が一番安いと言っていますが、原発を作れば作るほど電気料金が高くなってくる。ここに着目をしなければならないだろうと思います。今、電気事業法が改正になって、電力会社以外のものでも電気をつくってもいい、電力会社が買いなさいと、こう言ってますね。電力会社が予定している四倍も電気をつくりたい、という企業がいますが、それらの企業のつくる電気の料金の単価というのはブロの電力会社よりも二割から三割安いんです。こりゃ電力会社の言うことが信用できないじゃないかと私ども考えるのが普通でしょう。電気料金をもっと下げられるはずだと。
私どもは、地球環境を守るという面から見ても大量浪費は改めなければならない、と思いますが私たちの生活水準下げるところまでやらないでも、まず効率化していく道があるはずです。
何よりも電力会社がいま、日本の一次エネルギーの四割を使って、その六割を廃熱として捨てている。名古屋で火力発電を新しくまた作るんだそうですけれども、それがようやく熱効率四八%ぐらいだそうですね。今までのが三八%ぐらい目玉〇〇万キロワットの熱を使いながら、電気に変えているのは一〇〇キロワット強なんですね。三分の二は捨てている。もっと効率化することを考えるほうが大事だ、ブロの電力会社が安く電気を作ることを考えなさい。こう私どもは言おうではないですか。
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そして各部門別に低エネルギー計画というものをきちっともつことです。産業部門で最終エネルギーの五〇%ぐらい、半分ぐらい使っているんです。それぞれの会社ごとに電気を使うものと熱を使うものといろいろありますが、熱を使うのが圧倒的に多いんですね、今の企業は。家庭でも冷暖房でも暖房だとか、お湯を沸かすとかいう熱が一番使われます。こういいうものは電気だけでなくて他のものでもできる、というようなことを考えようじゃないですか。車、コンビニ、なんかはそうですね。スーバーでも何時何分に、牛乳が売れ行きいいから搬入せよ、とかいろいろやるでしょ?そこまでやる必要があるのか。宅急便が毎日集めたり配ったりするというのは別にしても、長距離のものについては共同でやったらどうでしょうか。お叱りを受けるかもしれませんが、どこの町へ行っても、まず目につくのはパチンコ屋のきらびやかなものでしょ。日本中どこ行っても自動販売機があります。清涼飲料水だけの自動販売機、二百何十万台あるそうですが、全体では万百万台あるんですかね。それでも原発一基分を使っちゃうんです。これを規制するということは必要じゃないでしょうか。
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新しいエネルギーの開発普及も大切です。自然エネルギーはまとめてドカッと電気を起こすわけにはいかないんですね。太陽では天気のいい目ではいいが、雨が降ったりなどしますとずっと弱まりますね。ですから効率的にやろうとするとなかなかそうはうまくいかんでしょうけれども、しかし全体でやっていけぱこれは無限なエネルギーです。太陽光発電でもこれはサンヨー電気の技術屋が言っているそうですが、コストが今の半分にできるし、通産省が今年から三割に補助率を落としましたけれど、もっと力を入れてれば数が増える、量産体制になれば半分になる。いま、一式で四〇〇万円以上かかりますが、これはうんとやっていきますと原発を作るよりもはるかに威力を発揮するはずです。しかも、原発だと計画してから一〇年たたんとできないでしょ。太陽光発電というのはいうのは、通産省が今年が補助対象を増やしたんですけども原子力発電の四%ほどしか力をいれていないんですからね。また、アルミニウムは電気料金が高いので日本のアルミニウム産業は非常に遅れているそうです。けれどもそういう方向で努力する。太陽熱温水器は全部の家庭でやりますと、日本の家庭の半分ぐらいの温水を自給できるということですね。あと風力、地熱、ごみ発電、小型水力、これは十分研究していきますとできると、それぞれのことがやられています。通産省もだんだんそういう方向に向かわざるを得なくなりますね。ですから電力会社も自分達の本当の算盤勘定をいたしますと原子力発電よりもこっちの方がいいということに気がつき姶めます。
アメリカのカルフォルニア州のサクラメントの電力会社は成功してるんですね。住民投票で原発を止められ、それに替わって真夏のビークを少なくしながら経営をしていって成功させだということです。私ども来年ここへ行って実際に見てこようということなんですが、根本的に私どもが原子力しゃなきゃ電気を起こせないんだという発想から、地球環境を大事にし自然エネルギーをもっと使え、人間が安心して暮らしていける環境を作ろうじゃないかと発想を変えるときに日本のエネルギー政策のこれからの方向づけが決まってくるんだろうと思います。
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世界中に見ても今、原子力産業というのはたそがれです。アメリカはぜんぜん作ってませんしね。これから減るばっかりです。フランスが日本と一緒に原発推進やっていたんですけれども高速増殖炉をやめさせました。日本も電力業界もバカじゃないですからひとつ気がつきました。プルトニウム、MOX燃料を使う新型転換炉は経済的に寄与しないと止めましたね。この次は高遠増殖炉を止めるはずです、あわないんですよ、これは。で、これがやめると萬処理が必要なくなってくる。だってプルトニウムなんか使いますとね、低レベル放射性廃棄物だって三〇〇年間管理しなかんでしょ。高レベルだと三〇年から五〇年冷却をしてそれから地口処分を何万年もやらなきゃならない。日本で何万年も続いた会社がありますか。野村謹券ですらどうなるかわからない世の中でしょ。とても何万年も会社が続くことはない。とすると負の財産を私どもは子孫にわたすことを承知でこの原発を続けさせるというわけにはいかんでしょ。私どもの子供たちに、この地球が安全であるようにして手渡すことが私どもの責務だろうと思うんですね。で、世界中がもう原発を見直している中てだった一人目本だけが原発大丈夫です、と言ったってそれはもう通用しない。原発は今の技術では完全に安全が保障されていない。地域振興もその町の、村の人たちが力あわせなければできない。そして、エネルギー政策も原発だけでなくて、太陽エネルギーやら、今のエネルギーの効率化などを、もっと追求することによって十分にやっていける。そういう見通しがついた時になお、原発をやらなきゃいけませんというのはきわめて少数派であります。そういう全国的な声が巻町を勝利に導いたのであり、みなさんも「住民が主人公」になる地域をつくった時に、どんなにもがいても中部電力が芦浜原発をつくることができなくなるだろうと私は信じています。そういうたたかいに成功されることをお祈りして私の話を終わらせていただきます。
(文責・O〉
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