
- 西名阪自動車道では、橋梁振動により低周波音が発生していることが確認された。この振動は高架橋上を車輛が通行することによって引き起こされ、特に大型車通行時には、低周波音圧レベルは90数dB(高架橋直下、オールパス)にも達する。
- 上下線別では、上り車線を大型車が通過する時のレベルは、下り車線通過時より高く、これは「上り車線の方が低周波音がきつい」という住民の訴えとも一致している。(但し、すべての時間帯に渡ってこのことが言えるかどうかについてはさらに調査が必要である。)
- 家屋内外の低周波音圧レベルは、10Hz以下の周波数ではほとんど差がなく、従って香芝高架橋周辺で特にレベルが高い5Hz付近の低周波音には室内でも戸外と同様の暴露を受けていることが結論される。また浴室では、10〜31.5Hzの帯域で、戸外よりもいくぶん高くなる傾向が見られ、「浴室の中が最もきつい」という住民の訴えを裏付けている。窓の開閉による差は、測定周波数範囲で顕著には見られない。すなわち、窓をしめることによって低周波を防ぐことはできない。
- 1日周期の変動では、昼間は夜間に比較してややレベルが高いものの、すべての時間帯で80〜90dB(90%レンジ上限,1〜30Hz)の範囲にあり、24時間中高いレベルの低周波音にさらされている。特に静ひつさが必要とされる就寝時間帯でもほぼ80dB(同上)以上の値であり、睡眠妨害等の訴えが多く見られることの原因となっている。結局、香芝高架橋周辺の住民は、勤め・外出などで離れた所へ行っている時間を除いては、屋内でも戸外でも、昼間も就寝中も常に高いレベルの低周波音にさらされ続けている。家への滞在時間が長い主婦,幼児,老人等は特に長時間の暴露を受けており、低周波の影響を最も大きく受ける集団である。このことは本調査でも確認されたように、女性の有訴率が男性よりも高いことの原因の一つとなっていると思われる。
- 高架橋からの距離との関係では、低周波音圧レベルは高架橋直下で最も高く、高架橋から離れるに従って低下する。すなわち、高架橋に近い所ほど高レベルの低周波音にさらされており、被害はより深刻であろう。健康被害の第2回調査の高架橋からの距離別の集計結果から、被害と西名阪自動車道との関係は明白である。もちろん西名阪自動車道は騒音、粉塵、排気ガス、振動等の発生源であり、これらによる環境の悪化は明白であるが、香芝においてはさらに低周波音の存在が住民の健康被害を深刻なものにしていると思われる。その根拠は、
@実験室における低周波音暴露実験で生じることが認められている症状が表われていること。
A他の低周波音被害を受けている地域と同様の症状が表われていること。
B香芝町の「今泉事件」の際、高レベルの低周波音により、短時間のうちにより激しい形で同様の症状があらわれたこと。
C高架橋から離れると、「スッと楽になる」場合が多い。等々である。
- 家屋被害については、振動測定データが不足しているため、西名阪及び国道より発生する振動の影響と低周波音の影響とを区別できないが、高架橋に近い所ほど被害が大きい。また西名阪周辺で測定された低周波音圧レベルは、実験的に求められた「建具がガタつき始めるレベル」に達していることが明らかになった。この低周波音による建具のガタツキが睡眠妨害やその他の生活妨害の原因の1つとなっているであろう。
以上のことから、高架橋から発生する低周波音が、沿線に及ぼされる様々な被害の原因のひとつであり、住民の訴えの多くはそれぞれ物理的・生理的に一定の根拠のあるものと結論できる。