第5節 周波数分析

図1-7 各種自動車の周波数構成

(速度46.3km/h,7.6mの地点)

図1-8 オクターブ分析と

1/3オクターブ分析結果の比較

 音は周波数によって聴覚に対する作用や伝搬性状などが異なるから、騒音の影響の評価や騒音防止計画のためには、各周波数別に音圧レベルがどれ程であるかを明らかにする必要がある。このように(騒)音に含まれる周波数成分を調べることを周波数分析といい、その最も簡単なものがオクターブ分析と呼ばれるもので、1オクターブの範囲のみを通すフィルターを次々に切換えて分析する方法である。図1-7に自動車騒音のオクターブ分析の例を示す。自動車騒音が広い範囲の周波数成分を含み、また、主要な成分は125〜250Hz付近にあることが周波数分析により明らかになっている。さらに細かい分析を必要とする場合には、1オクターブを3分割した1/3オクターブ幅のフィルターによる1/3オクターブ分析がおこなわれる。図1-8にその例を示した。

表1-2 オクターブフィルタおよひ

1/3オクターブフィルタの下限・上限・中心周波数

周波数 シュウハスウ (Hz)
オクターブ 1/3オクターブ
下限 中心 上限 下限 中心 上限
11.2 16 22.4 14 16 18
      18 20 22.4
      22 25 28
22.4 31.5 45 28 31.5 35.5
      35 40 45
      45 50 56
45 63 90 56 63 71
      71 80 90
      90 100 112
90 125 180 112 125 140
      140 160 180
      180 200 224
180 250 355 224 250 280
      280 315 355
      355 400 450
355 500 710 450 500 560
      560 630 710
      710 800 900
710 1000 1400 900 1000 1120
      1120 1250 1400
      1400 1600 1800
1400 2000 2800 1800 2000 2240
      2240 2500 2800
      2800 3100 3550
2800 4000 5600 3550 4000 4500
      4500 5000 5600
      5600 6300 7100
5600 8000 11200 7100 8000 9000
      9000 10000 11200
      11200 12500 14000
11200 16000 22400 14000 16000 18000
      18000 20000 22400











注)「オクターブ」とはもともとは音楽用語であるが、周波数が1:2となる2つの音の関係を意味する。500Hzと1000Hzとは1オクターブの関係にある。オクターブフィルターの場合には通過させる周波数の下限と上限が1:2の比となっている。例えば、中心周波数125Hzのオクターブフィルターは、90Hz(下限)から180Hz(上限)の範囲のみを通過させる。1オクターブの下限上限および中心周波数をそれそれf、f、fとすれば次の関係がある。

次に1/3オクターブであるが、これは1/3オクターブめ関係を3段階くり返して1オクターブになるという意味である。f1とf4が1オクターブの関係にあるとすれば下のように示される。

これから1/3オクターブとは周波数が1:(約1.25倍)の関係であることがわかる。 1/3オクターブの上限,下限および中心周波数は次のようになる。

オクターブあるいは1/3オクターブ分析をおこなう際の中心周波数等の設定が任意におこなわれることはほとんどなく、国際的にも表1-2 に示すような中心周波数、通過帯域(下限〜上限)を持ったフィルターが広く使用されている。

文献

1)永田穂:建築の音響設計 オーム社、1974

2)日本音響学会編:聴覚と音響心理 コロナ社.1978

3)日本音響材料協会:建築音響関係JIS解説

4)衛生工学ハンドブック−騒音・振動編 朝倉書店.1980

5)騒音・振動対策ハンドブック