3-4 低周波音の伝播性状(距離減衰)

図3-6 低周波音の日周期の変動(奈良県当局による測定)

 

 香芝高架橋周辺における低周波音の音源の位置と伝播性状を明らかにするために,図3-6の3地点での平均値を1枚の図にまとめたものが図3-10である。すべての周波数帯域で高架橋より離れるほど音圧レベルか低下していることが明らかである。高架橋に近づくほど低周波音の音圧レベルが高くなるということは,香芝高架橋付近に低周波音の発生源があることを示唆するものである。

 音の距離減衰という場合には,音源からの距離が2倍になるごとに何dBの減衰を示すかによって表現される場合が多い。一応図3-10では25mと50m地点とが倍距離の関係にあるが,2〜10dBの減衰を示しているようである。 5Hz付近で特に減衰が激しい。しかし今回の測定では測定点数が少ないため,これ以上のことは言えない。

図3-10 距離によるスペクトルの違い

 

 

(注)音源の大きさが距離に比較して無視できるほど小さいものであれば音源を点または線と考えることができる。比較的音源に近い所では,音源の大きさや形による影響を受ける。本項の測定でも距離は高架橋端からの水平距離をとっているが,音響中心がどこにあるのかは難しい問題である。また,面状の振動物体から音が放射される場合には,表と裏では位相の異なった音が放射されることになり,周囲の音場の問題も複雑である。

 


 図3-8を見ていただきたい。まず5Hz付近の音に注目してみると橋の直下では60dBをはるかに越える音圧(図3-7によれば90数dBにも達する)がひんぱんに発生しているが,50m地点では,60dBを越える音にさらされる時間ははるかに短かくなることがわかる。

 また,この図において,25m地点の60秒前後に5Hz付近の波の山があるが,50m地点でもそれと同時刻に5Hz付近の波の山があり,この地域で観測される低周波音は同一の発生源からのものであることを示している。

 同じ,図3-8において,今度は30〜70Hzの音に注目すると,橋の直下はもちろん,50m離れた地点でもなお,ひっきりなしに60dB以上の低周波音に襲われていることがわかる。