この報告書は西名阪自動車道による騒音・低周波音などの公害に悩まされている奈良県香芝町の沿道住民と,その訴えを支持する「西名阪道路公害裁判を支援する会」から国土問題研究会に委託された調査の結果をまとめたものです。
調査は委託の主旨から,契約書にうたわれているとおり,西名阪自動車道香芝高架橋周辺に発生している住民被害の原因の1つと考えられる低周波空気振動等の発生源を突きとめ,被害と原因の物理的対応関係を解明し,それによって対策を立てる基礎資料を得ることを目的として行われました。
この目的を達成するため国土問題研究会を中心に日本科学者会議・民医連医師団など各分野の科学者・技術者から有志を募り「西名取自動車道香芝高架橋問題科学調査団」を結成し活動をすすめてきました。
この低周波空気振動の研究はやっと始まったばかりの学問です。このいまだに未知なる点も少なくない問題に肉迫するため,調査団は現地に赴き,被害者の立場に立って現象を体験し,測定を行ないました。測定データの解析結果は集団で討議し,分析を深めました。こうして,四年半にわたる調査結果を今回ようやくとり括めることが出来ました。
この期間の調査およびそれに関連する諸活動の全容は次のとおりです。
住民の被害という不幸な事態がきっかけではありましたが,この調査を通じていささかなりともこの新しい公害の実態を明らかに出来たことを自負しています。この報告書か今後この問題の研究と対策の一領の発展に貢献できることを念願しています。
この報告書の完成をみることなく,調査途中で亡くなられた調査団員故石垣参策氏(地質学,文献調査担当),故芳野和道氏(医師)に本書を献げ,生涯を”民衆のための科学”に棒げられた両氏のご冥服をお祈りします。
本調査に参加した団員は次のとおりです。
調査団名簿
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1984年3月20日
西名阪自動車道,香芝高架橋問題科学調査団