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4-1 橋の振動と低周波音の発生
前節で香芝高架橋周辺における低周波音の発生源(音源)は,香芝高架橋であることを距離減衰から推定した。ここでは,橋からどのような原因で低周波音が発生するのかを検討する。
これまで,橋からの低周波音発生の原因については,いろいろ議論されているが,最大の論点は,橋架の振動が原因であるのか,それともそれ以外の原因(自動車のエンジン音,車の走行音,車の走行時の風圧など,いろいろ考えられている)であるのかという点であろう。ここでは,まず,第一に,橋桁の振動が原因であるのか否かを検討してみよう。
図3-15は,橋桁の振動と高架橋直下の音圧との関係を測定したものである。橋桁の振動については,中央の主桁の下フランジに振動ピックアップ(加速度計)を設置して鉛直方向の振動加速度レベルを測定した。橋直下の音圧については,地上1.2mに低周波音用マイクロホンを設置して測定した。図3-15には,低周波音の波形と橋桁の振動波形(鉛直方向の変位で表示)を時系列で示した。
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音圧(高架直下,上り車線スパン中央) |
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図3-15 橋架振動と音圧の関係 |
| (稲架が上下に振動し,直下に低周波音が発生するのがよくわかる。0.7〜0.8Hz程度の周波数の振動に約4.8Hzの振動が重畳している。) |
図3-15の上図をみると,橋桁が上下に振動している様子がよくわかるが,周波数に注目すると,0.7〜0.8Hz程度の周波数の波に,約4.8Hzの波が重畳しているが,卓越しているのは4.8Hzであり,その振幅も大きい。
この4.8Hzという周波数は,香芝高架橋 (測定した部分の径間にかかっている単純ばりとしての橋桁)の一次の固有振動数であると考えられる(一般に,スパン20〜30mの合成桁橋の固有振動数(一次)は,5Hz付近であると言われている(注1)。
一方,低周波音の周期をみると,こちらにも4.8Hzの周期の波が明瞭に観察され,その振幅も大きい。両者の卓越周波数は完全に一致している(周波数の一致)。
次に,橋桁の振動波形をみると,4.8Hzの波の振幅が最大になる時刻は,始点から3.5〜5秒経過したところであるが,低周波音の波形をみると,それと同時刻に大きな音圧の低周波音が発生している(発生の同時性)。なお,10〜11秒付近では,橋桁の振動波形のうち,周波数が約0.7Hzの波の振幅は大きいが,4.8Hzの波の振幅は小さく,同じ時刻の低周波音の音圧は小さい。
以上からみて,4.8Hzの超低周波音は,橋桁の振動によって発生していると推定される。先に,3節で香芝高架橋の周辺には,5Hz付近に音圧の高い低周波音が存在することを述べたが,5Hz付近とは,1/3オクターブバンドでは,4.5〜5.6Hzの周波数帯域のことである。従って,5Hz付近の低周波音と4.8Hzの低周波音は,周波数としては一致している。すなわち,香芝高架橋周辺で発生している5Hz付近の低周波音は橋桁全体の振動によってひきおこされていることは,ほぼ間違いない。
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直下香圧レベル |
橋桁振動加速度レベル |
20m地点音圧レベル |
| 図3-16 橋梁振動と低周波音のスペクトル(郡山市内の小河川を渡る橋) | ||
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| 写真3-5 郡山インター西方の合成橋桁 (4本支柱) |
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ところで,香芝高架橋の近くの大和郡山市内の郡山インターチェンジの西方に西名阪自動車道が小河川を渡る橋がある(写真3-5)。この橋は,香芝高架橋と同じ形式の合成桁であり,スパン(径間)も大差ない。(但し,主桁は4本である)この橋についても,同様にして,橋の振動加速度レベルと橋の直下の河原の地上1mの地点と橋から20m離れた地点の低周波音を測定した。その結果を図3-16に示すが,橋梁の振動のスペクトルにも,低周波音のスペクトルにも,3〜5Hz付近の周波数にピークがあり,両者は一致していることがわかる。つまり,ここでも,低周波音が合成桁形式の橋梁の振動によってひきおこされているという推定が裏づけられたことになる。
図3-17は,観察を容易にするため,上記スペクトルを三次元表示したものである。橋梁振動と低周波音発生が同時に起こっており,卓越した周波数成分も同じであることが確認される。振動と音圧の同時性をより明確にするために,オールパス,5Hz,31.5Hzについて,振動が速度レベルおよび音圧レベルの時間変化を示したものが図3-18である。いずれの周波数も変動がよく一致していることがわかる。
なお,この大和郡山市内の橋の交通条件は,同じ西名阪自動車道であり,距離的にも近いので,香芝高架橋とほぼ同じであると考えられる。また,この橋は2スパンだけであり,すぐ近くに住宅はないため,被害の訴えはない(写真3-5)。
(注1) 橋桁の一次の固有振動数が観察されたということは,中央の下フランジにとりつけた加速度計が,フランジの部分振動を拾っているのではなく,橋桁が一体となって曲げ振動をしている状態の振動をひろっているといえよう。
(注2) 図3-15について考えると,3.5〜5秒付近の橋の振動(変位)は,大型車かある径間の橋梁にさしかかって,その径間から出てゆくまでの状態をさしていると思われる。この間には,周期が約1.2秒(約0.8Hz)の波が観察されるが,これは大型車が時速76.5qで25.51のスパンの橋を走行してゆくときに相当する。