3-3 健康被害の推移

 第3回目の調査は、第1回目から約3年後に行ったが、健康被害が3年の間にどのように推移しているかを明らかにすることを目的とした。調査の結果を表5-3に示す。

5-3 第3回調査にもとづく訴えの数と比率

(対象者 男性32人 女性22人 計54人)

症候群T 症候群U 症候群V 症候群W 症候群X 症候群Y

 T群は心理的苦情を集め、U群以下は生理的苦情であるが、U群は大体聴覚及前庭機能と関係あるもの、V群は乾燥症状、W群はおもに胸部、腹部の症状、X群はおもに筋肉や関節に対する苦情を中心とし、Y群は膀胱等下腹部とその他を集めた。表5-3のうち、各群の中で代表的な症状をぬき出してグラフ化したものが、グラフ5-8である。睡眠妨害、イライラ、頭痛という心理的苦情は80〜90%に見られる。生理的苦痛では、感冒様症状、のどか乾く、の割合が高く、次いで、肩こりや肩の痛み、と食欲不振(胃腸障害)も多い。そのほか、半数近くの人が、難聴、耳嗚などの聴覚症状を訴えている。鼻血も40%近くある。前庭機能に関係するめまい61%、目がクシャクシャするが61%、又膀胱症状として、尿回数が多いが23%と比較的高率である。テレビやラジオの聴取妨害も高率に訴えられて居る。

グラフ5-8 第3回調査時の症状のうちおもな項目


上記の様々な自覚症状は、どの様な他覚的所見を伴うものであろうか、現在迄、唯一の他覚的所見として舌苔が消化器症状の所見としてあげられて居るのみである。

吾々は第一回調査時に検診を実施したが、この検診結果を表5-4に示した。

表5-4 第1回調査時の検診の結果(44名)

(昭和53年7月2日)

 A) 血圧異常  貧血      0


             白血球増多  3
            (10000以上)

 B) 検尿所見

           ウロヒツノーゲン(+) 9

           蛋 白(+)       1

その内めまいを訴えた者    3

   動 悸  〃          2

   耳 鳴  〃         2

 C) シエロングテスト陽性別     7名

     (立、臥位血圧差20m/Hg以上)(16%)

 D) 血圧異常

    低血圧(収縮期血圧90m/Hg以下)  1

    高血圧                   2

 E) 理学的所見

   イ)鼻粘膜充血         4(9%)

   ロ)外耳道発赤         5(11%)

   ハ)咽頭発赤          7(16%)

   ニ)膀胱症状を訴えるもの  3(7%)

      (頻尿、排尿時異和感)

   ホ)腰 痛            1

 以上の如くシエロングテスト陽性例7名と循環動態の河安定な人及び、E)項(イ)(ロ)(ハ)の如く、感冒症候群と思はれる人が比較的高率に見られた。

(A)血液所見では白血球増多症を示すものが3名

(B)血圧異常:高血圧2名、低血圧1名(最高血圧90mm/Hg以下)

(C)シエ口ングテスト:陽性7人(16%)

(D)理学的所見:

  鼻粘膜充血4人(9%) 外耳道発 5人(11%) 咽頭発赤7人(16%)膀胱様症状3人(7%) 腰痛 1

 以上の様に咽頭粘膜発赤(16%)を中心に、一気道の炎症所見が比較的高率に見られる。又シエロングテスト陽性例が高い(16%)が、此の中で低血圧症は一名のみであり、他の6人の血圧は正常範囲であった。此の事実は、自律神経失調症を示唆するものと考えられる。また頻尿、排尿時異和感など膀胱症状の訴えを確認出来たものが3例7%に認められた。以上に見る様に臨時医学的には幸にして重大な病理的変化を認めるには到らなかったが、シエロングテストや、咽頭発赤等、自覚症状と矛盾なく関連づけられる所見を見出し得た事は、低周波音の暴露による生体反応の一端を示すのとして注目されうる。

 健康被害を訴えている割合が第1回調査時から第3回調査時までにどう変ったかを、主な項目について比較したものが表5-5である。表5-5によれば、睡眠妨害、イライラする、感冒様症状、耳鳴りなどは第3回の方が非常に高くなっている。胸の圧迫感、めまい、動悸はほぼ同率である。肩こりは減少している。

表5-5 第1回と第3回の率による比較

 表5-6は、表5-4と同じデータ(第3回調査)を、男女で比較したものであるが、多くの項目で、女性の方が症状を訴えている割合が高い。

表5-10 第3回調査に基づく男女の比較